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連結会計とは?間違えやすい連結決算との違いも分かりやすく解説

会計という言葉は聞いたことがある方がほとんどだと思いますが、「連結会計」という用語は聞き馴染みがない方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では連結会計の意味を解説し、似た用語の「連結決算」との違いについても解説します。

目次

連結会計とは?

連結会計とは、親会社と子会社(関連会社)の財務諸表を合算してグループ企業全体の財務諸表を作ることです。

一般的には上場企業等で子会社のある会社」に対して、会社法で義務付けられている会計処理として認知されています。

連結会計が行われるようになった背景

連結会計が行われるようになった背景には、親会社と子会社の関係性にあります。

グループ経営を行っているような大企業では、親会社が子会社を支配している場合が多く、取引に関して指示することが可能な状態にあります。

そのため「親会社の赤字を子会社に押し付ける」「不良在庫を買い取らせる」などの行為を行い、不正に黒字に見せかけることが可能になってしまいます。

その結果グループ全体の財政状態が不明瞭になってしまうため、グループ全体の経営成績をまとめて確認できるようにしたことが背景にあります。

親会社と子会社

親会社と子会社の関係には「支配従属関係」(または親子関係)と呼ばれる関係性があります。支配する側の会社を「親会社」、支配される側の会社を「子会社」と呼びます。

支配従属関係とは、「形式基準」と「実質基準」の2つを指します。

形式基準とは、親会社が子会社の議決権付き株式を過半数以上所有していることで、持ち株基準とも呼ばれます。

実質基準とは過半数までいかなくても過半数に近い場合(40%以上)には経営実態で判断することで、支配力基準とも呼ばれます。

連結対象企業とは

連結対象企業は、先述したような親会社・子会社などのグループ企業において、連結決算の対象となる企業のことを指します。

複数の子会社が連結会計の対象となる場合は、すべての子会社を連結対象とするのが原則です。

連結会計を実施するメリットとデメリット

連結会計を行うメリットとデメリットにはどのようなものがあるでしょうか。

先ほど連結会計について「上場企業等で子会社のある会社に対して、必要な会計処理」と記載した通り、連結会計が義務付けられているグループ企業においては「デメリットがあるから連結会計をしない」という選択肢はありません。しかし、メリットとデメリットを理解した上で日々の会計業務に携わることが重要なので、知っておくべき知識となります。

メリット

上場企業等で子会社のある会社が連結会計を行うことで得られるメリットは2点あります。

 

・グループ全体の経営状態が明確になる

親会社だけ、または子会社だけで見た場合の経営状態だけでなく、グループ全体での経営状態が明らかになります。そのため、経営が健全であるかどうか把握できるとともに投資家にもグループ全体の明確な財政状態を開示できます。
その結果として、グループ間での不正な取引の防止にも役立ちます。

 

・銀行の融資が受けやすくなる

「連結会計」と「銀行の融資」が一体なぜ繋がるのか、疑問に感じる方もいらっしゃるでしょう。
銀行ではその企業に対する融資を検討する際に、子会社との取引状況も調査します。あらかじめ連結会計をしていれば子会社との取引も既に把握出来ているので、融資の審査期間が短縮されるので、融資が受けやすくなります。

デメリット

一方で、上場企業等で子会社のある会社が連結会計を行うデメリットもあります。

 

・連結財務諸表の作成に膨大な手間がかかる

親会社だけ・子会社だけ、といった1社ずつの個別財務諸表の作成に比べ、連結財務諸表の作成はグループ間での取引を合算して相殺するといった仕訳が必要になります。合算・相殺などの仕訳作業により、作成にかかる時間や手間などの労力が大幅に増えることが最大のデメリットです。

日頃の会計業務を1つ1つ正確にこなし、決算時に慌てなくても済むように準備をしておきましょう。

連結決算とは?

連結決算とは、親会社と子会社のグループ全体でキャッシュフローの状況のほか経営成績や財政状態を明確にするために行われる決算を指します。それぞれを1つの企業とするのではなく、グループ全体で1つの企業と考えて決算を行います。

 

通常の決算で財務諸表を作成するのと同様に財務諸表を作成しますが、連結決算の場合は親会社と子会社の財務諸表を合算した「連結財務諸表」を作成します。

連結会計と連結決算の違い

連結会計と連結決算の言葉が似ているため、同じものとして混同しがちです。

この2つの相違点としては「会計」と「決算」に分けて考えると理解しやすいでしょう。

 

まず会計とは、企業のお金の出入りを記録して資金の流れを管理することです。

 

会計業務の主目的は以下の3点です。

  1. 投資家など外部への情報開示
  2. 税金の計算
  3. 社内の資金管理

 

それに対して決算の目的は、企業の財務状況を明確にすることです。

 

この違いをまとめると、以下のようになります。

「連結会計」:会計処理を実施し、決算月に親会社と子会社といったグループ全体の連結会計業務をすること

「連結決算」:連結会計業務をしている中で決算の処理を実施すること

連結財務諸表とは?

連結決算の対象となる親会社と子会社などのグループ全体を「1つの会社」とみなし作成する財務諸表のことを連結財務諸表と呼びます。

連結財務諸表は親会社や子会社、それぞれの会社の個別財務諸表を基にして作成されます。個別財務諸表をただ単に合算させるのではなく、グループ内での取引を相殺してグループ全体での総合的な経営成績や財政状態などを正確に把握するために作成されます。

 

連結財務諸表の種類は、以下の通りです。

・連結貸借対照表

・連結損益計算書

・連結株主資本等変動計算書

・連結キャッシュフロー計算書

・連結附属明細表

連結貸借対照表とは

貸借対照表とは、その企業の期末における「資産・負債・純資産」がどのような状態になっているかを表す財務諸表です。親会社、子会社それぞれの個別貸借対照表を合算・相殺し、グループ全体の連結した貸借対照表のことを「連結貸借対照表」と呼びます。

連結貸借対照表を用いると、グループ全体の財政状態の把握が容易となります。

連結損益計算書とは

対象となる会計期間におけるグループ全体の経営成績を表す連結損益計算書は、親会社と子会社の個別損益計算書を合算・相殺して作成される財務諸表です。収益と費用によって構成され、その差額となる利益がどれだけあるのかを見ることで、その企業の経営成績が分かります。

連結株主資本等変動計算書とは

株主資本等変動計算書は、会社法の改正により新設された財務諸表です。

2005年の会社法の改正によって、株式会社はいつでも剰余金の配当を決められることになりました。そのため、資本金の金額などの連続性を容易に把握することができるようになり「利益(損失)処分案」に代わって、新たに決算書に加わりました。

対象会計期間の貸借対照表の純資産の変動金額のうち、主に株主資本の項目の変動理由を明らかにするために作成されます。

連結株主資本等変動計算書は、変動理由の中でも親会社の株主に関わる株式資本の変動を表す決算書です。株式資本の変動とは自社株の取得・処分や株式の発行のことで、純資産を以下の4つの項目に区分します。

  1. 株主資本
  2. その他の包括利益の累計額
  3. 新株予約権
  4. 少数株主持分
連結キャッシュフロー計算書とは

対象会計期間における企業のキャッシュ(お金)の流れ(フロー)を把握するための財務諸表です。

 

以下の3つの区分に分けて表示します。

  1. 本業の営業活動によるキャッシュフロー
  2. 投資活動によるキャッシュフロー
  3. 資金調達など財務活動によるキャッシュフロー

 

親会社、子会社それぞれのお金の流れを見るのではなく、グループ全体のキャッシュフローを見るために連結キャッシュフロー計算書が必要となります。

連結附属明細表とは

会社法上の決算書類には含まれませんが、その名の通り決算書類に付属し、より明細を明らかにするために作成しなければならない書類です。

連結附属明細書には社債や借入金、資産除去債務の明細表があります。

連結財務諸表が重視される理由

上場企業等で子会社のある会社の決算において連結財務諸表が重視される理由は、親会社・子会社それぞれの個別財務諸表では分からない、グループ全体の総合的な経営成績や財政状態が正確に把握できるからです。

もちろん会社法で定められているため必ず作成しなくてはいけない決算書類ですが、自社がどのような状態なのかを最も把握したいのは「連結決算をする企業自身」です。グループ間での不正な取引も防止し、健全な経営をするために連結財務諸表は重視されます。

連結財務諸表作成における一般原則

連結財務諸表を作成する際は以下の4つの原則に従う必要性があります。

 

  1. 真実性の原則
  2. 基準性の原則
  3. 明瞭性の原則
  4. 継続性の原則

 

ひとつずつ解説していきます。

真実性の原則

会社の財政状態および経営成績に関して、真実の報告を行うこと。

基準性の原則

親会社及び子会社が一般的に公正で妥当だと認められる会計基準に則り作成した個別財務諸表を基にして作成すること。

明瞭性の原則

グループ全体の財政状態に関して誤解をさせないように必要な情報を明瞭に示すこと。

継続性の原則

連結財務諸表作成のために一度採用した基準および手続きは毎期ごとに継続して適用し、みだりに変更しないこと。

 

以上の4つの原則が掲げられており、金融庁にて原則が制定されています。

連結財務諸表を作るには

連結財務諸表を作成する際は、以下の通りです。

 

  1. 個別財務諸表を作る
  2. 親会社と子会社の財務諸表を合算する
  3. 連結調整仕訳を行う
  4. 連結財務諸表を作る

 

一つずつ解説していきます。

個別財務諸表を作る

まずは通常の決算時と同じように親会社と子会社から個別財務諸表を作成します。

親会社は連結決算に必要なデータを子会社から入手しておきます。

親会社と子会社の財務諸表を合算する

次に、個別に作成された親会社と子会社の財務諸表を合算します。

帳簿上での合算の仕訳は必要ありません。

連結調整仕訳を行う

親会社と子会社との間の取引や債権・債務は、全て相殺処理が必要です。この時に相殺する仕訳のことを連結調整仕訳と呼びます。この作業は帳簿ではなく、連結精算表で行います。

連結財務諸表を作る

最後に連結調整仕訳を反映させる。これで連結財務諸表の完成です。

非上場企業の連結会計

中小企業などの非上場企業なら連結会計は必要ないのかというと、そうではありません。

非上場企業でも連結会計が必要な場合は、以下の2パターンがあります。

  1. 非上場企業でも連結会計が義務付けられている場合
  2. 任意で連結会計を行う場合

 

ひとつずつ解説します。

非上場企業でも連結会計が義務付けられている場合

中小企業などの非上場企業でも、親会社の上場企業と支配従属関係(親子関係)にあると認定された場合、連結会計を行う必要があります。

また1億円以上の有価証券の募集や売出しを行った会社など、有価証券報告書の提出義務がある会社も連結会計の対象になります。

任意で連結会計を行う場合

義務付けられていなくても、任意で連結会計を行っている会社もあります。

連結会計を行うメリットとデメリットはそれぞれ2点ずつ挙げられます。

 

連結会計を行うことで得られるメリット

・グループ全体の経営状態が明確になる

・銀行の融資が受けやすくなる

 

一方で、連結会計を行うデメリット

・任意で行う連結決算も監査を受ける必要がある

・連結財務諸表の作成に手間がかかる

 

「非上場企業だから大丈夫」と過信せず、自社の状況を確かめておきましょう。

まとめ

今回の記事では、連結会計の意味や連結決算との違いについて解説しました。

連結会計とは、親会社と子会社(関連会社)の財務諸表を合算してグループ企業全体の財務諸表を作ることで、決算月に親会社と子会社といったグループ全体の連結会計業務をすることです。

連結決算とは、親会社と子会社のグループ全体でキャッシュフローの状況のほか経営成績や財政状態を明確にするために行われる決算を指し、連結会計業務をしている中で決算の処理を実施することです。

上場企業などの大企業で子会社がある場合には、必要な会計処理となります。
用語の意味をしっかりと理解した上で、日々の業務に活かしていただけると幸いです。

この記事の監修者

筧 智家至

グランサーズ株式会社 代表取締役CEO
公認会計士・税理士

1980年愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒。
2004年に監査法人トーマツ(現:有限責任監査法人トーマツ)に入社。 2012年に税理士法人グランサーズの前身となる筧公認会計士・税理士事務所を設立。 2013年にグランサーズ株式会社の前身となるMeguro Growth Consulting Partners株式会社を設立。
スタートアップからIPO(上場)準備会社まで、あらゆる成長企業のサポートをしており、税務会計顧問にとどまらない経営を強くするためのコンサルティング、経理を中心としたバックオフィス支援サービスにより中小企業経営者の信頼と定評を得ている。
また、経理未経験者を積極的に採用し、学習と実務を同時に提供できる環境づくりに注力。経理未経験者を育て上げ、東証プライム(東証一部上場)企業へ転職させた実績多数。これまでに延べ100名以上の経理人材を育てている。

スタディジョブ 運営部

2021年生まれ。 BPOや業務効率化など企業成長のためになることがすき。 特にスタートアップやベンチャーなど新しいことに挑戦している人たちを応援するのが生きがい。 知りたい情報のリクエストも受け付けてます!

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