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前受収益は、企業会計原則において以下のように定義されています。
前受収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の収益となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、前受収益は、かかる役務提供契約以外の契約等による前受金とは区別しなければならない。
引用:企業会計原則注解5「経過項目勘定について」(2) |
以上の定義をふまえて、ここからは前受収益について詳しく解説します。
前受収益のポイントは、サービスの提供を受けていないにもかかわらず、すでにお金が支払われている点です。
収益は、サービスの提供を受けた時点で計上しますが、サービスの提供を受ける前に支払われたお金は当期の収益にはならなく、翌期以降に繰り延べられます。翌期以降、サービスの提供を受けた時点ではじめて収益に計上します。
前受収益などの経過勘定科目は、決算時に貸借対照表の負債の部に分類されます。
前受収益はどの会社でも発生するものではなく、会社の事業形態によって発生しやすかったりそうでなかったりします。特によく発生する業種には以下のようなものがあります。
また、サブスクリプションなど、年払いや複数月にまたがる料金体系の事業も前受収益が発生します。サブスクリプションのような継続課金ビジネスは、年払いや複数年払いなどさまざまな料金体系があるので、正確な会計処理をするよう気をつけなくてはいけません。
長期前受収益とは、決算日から起算して1年を超えて収益となるものを処理する勘定科目です。前受収益は、貸借対照表の「流動負債」に分類されますが、長期前受収益は「固定負債」に分類されます。
前受収益と似ている科目に「前受金」と「仮受金」があります。会計処理をするにあたっては混同しやすく注意が必要なため、前受金と仮受金の内容について簡単に解説します。
前受収益がサービスの提供を「継続的」に行うのに対し、前受金はサービスの提供を継続的に行うわけではありません。つまり前受金は、時の経過とともに収益に計上されるものではありません。
例えば不動産取引などの高額な商品の販売前に、手付金として代金の一部を受け取るケースなどが前受金にあたります。
仮受金も前受収益や前受金と同様にお金を受け取った時に処理する科目です。ただし、仮受金は受け取ったお金の内容が不明確で、文字通り最終的な処理を確定できない場合の仮の科目です。
仮受金は一時的に処理する勘定科目なので、そのまま決算を迎えることは望ましくありません。決算期を迎えるまでには内容を確認のうえ、正しい勘定科目へ振り替える必要があります。
ここからは、前受収益の仕訳について具体例を用いて解説します。
1.自社保有のビルを11月1日に賃貸契約し、賃料840,000円(年払い)を受け取った。(会計期間:4月1日~3月31日)
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
現金預金 | 840,000円 | 受取賃貸料 | 840,000円 |
2.決算時(3月31日)に翌期分の収益490,000円を前受収益に計上した。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
受取賃貸料 | 490,000円 | 前受収益 | 490,000円 |
当期の収益は、840,000円÷12カ月×5カ月(11月〜3月分)=350,000円になります。
翌期の収益は、840,000円÷12カ月×7カ月(翌4月〜10月分)=490,000円になります。
当期の損益計算書の受取賃貸料には840,000円-490,000円=350,000円が計上されます。
3.翌期首(4月1日)に振替処理を行った。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
前受収益 | 490,000円 | 受取賃貸料 | 490,000円 |
翌期首に決算時と反対の仕訳を起こします。
前受収益の残高はゼロになり、4月〜10月分の収益(受取賃貸料)490,000円が計上されます。
1.自社提供のサブスクリプションサービスを7月1日に取引先と契約し、代金360,000円(年払い)を受け取った。(会計期間:4月1日~3月31日)
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
現金預金 | 360,000円 | 売上高 | 360,000円 |
2.決算時(3月31日)に翌期分の収益90,000円を前受収益に計上した。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
売上高 | 90,000円 | 前受収益 | 90,000円 |
当期の収益は、360,000円÷12カ月×9カ月(7月〜3月分)=270,000円になります。
翌期の収益は、360,000円÷12カ月×3カ月(翌4月〜6月分)=90,000円になります。
当期の損益計算書の売上高には360,000円-90,000円=270,000円が計上されます。
3.翌期首(4月1日)に振替処理を行った。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
前受収益 | 90,000円 | 売上高 | 90,000円 |
翌期首に決算時と反対の仕訳を起こします。
前受収益の残高はゼロになり、4月〜6月分の収益(売上高)90,000円が計上されます。
上記の例から、一定の契約に従って受け取ったお金のうち、翌期以降に充当されるものは当期の収益から除外して前受収益に計上することがポイントです。
前受収益は、正確な期間配分計算を行わないと売上を過大または過少に計上してしまうことになりかねません。売上の金額を左右し、損益計算書に大きな影響を与えるため適切な管理が不可欠です。
また、翌年度の期首には決算時と反対の仕訳を起こすことを忘れてはいけません。前受収益などのような経過勘定科目を決算時に計上したときは、翌期首に再振替仕訳を起こします。
2021年生まれ。 BPOや業務効率化など企業成長のためになることがすき。 特にスタートアップやベンチャーなど新しいことに挑戦している人たちを応援するのが生きがい。 知りたい情報のリクエストも受け付けてます!
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