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その年の正しい所得を計算し、所得税を納めるという点で年末調整と確定申告の目的は同じです。二つの大きな違いは、申告し納税するのが「誰か」ということです。
確定申告は、主に個人事業主やフリーランスの人が行うもので、個人で申告し個人で納税します。基本的には毎年2月から3月頃に、税務署に前年の1月から12月までの所得を申告します。そして確定された所得から算出された税額を分割もしくは一括で支払う必要があります。
一方、企業に勤める会社員などの給与所得者は、個人に代わって会社が税務署に申告し納税してくれます。前述したように、毎月天引きされる源泉所得税の合計は、年間で計算した正しい所得税額と一致しない場合があります。年末調整を行うことによって、正しい納税額が算出されるのです。
基本的にはパート・アルバイトも含めたほぼ全ての従業員が年末調整の対象者です。しかし、例外的に年末調整対象者にならない人も存在します。
その年に「扶養控除等(異動)申告書」を提出している人の中で、下記のいずれかに該当する人です。ほとんどの人はこれに当てはまると思います。
1年間続けて勤務している人(正社員、アルバイト、パート等含む)
転職後、年末まで勤務している人
海外支店への転勤や異動で非居住者となった人
年の途中、次の理由で退職した人
死亡した場合
障害などで再就職困難と見込まれた場合
パート勤務者が退職し、その年中に支払いを受ける給与額が103万円を下回る場合(退職後、その年に他の勤務先へ就職し給与支給がある場合は除く)
12月分の給与支給を受けた後に退職した場合
ここで注意したいのが、パート・アルバイトの人で年間103万円以下の収入でも年末調整が必要なケースがあるということです。月額給与が88,000円以上で源泉所得税が引かれます。
その年に一度でも月額88,000円以上の給与支給を受けた場合は、年末調整が必要です。
「扶養控除等(異動)申告書」を提出している人の中で、下記の該当者は年末調整対象者になりません。
ー年間の給与収入の合計額が2,000万円を超える人
2カ所以上から給与の支払を受けており、他の勤務先に扶養控除等(異動)申告書を提出している人
一定の条件を満たす日雇労働者
非居住者
災害減免法の規定により、その年の給与に対する源泉所得税の徴収猶予や還付を受けた人
年末調整は、どこの都道府県も概ね10月下旬もしくは11月頃から始まり、1月下旬にかけて次のような流れで遂行します。
1.申告書類の配布、回収、チェック(11月)
2.年末調整の計算/源泉徴収票の作成(12月)
3.法定調書合計表の作成、提出/支払調書の作成、提出/源泉徴収票の提出/給与支払報告書の作成、提出(1月)
しかし、各申告書が全て提出されれば「年末調整終了」というわけではありません。
提出された書類は労務担当者によって確認・整理されます。税負担を調整する「所得控除」の計算に使用され、申告書に誤りがないか確認します。
申告書に誤りがあると、年末調整業務をやり直さなければいけません。業務遅延を防ぐためにも正確な記入が必要となります。
書類回収の過程で年末調整がスムーズにできるかどうかが決まるといわれているので、提出期日のアナウンスや提出の催促などを行い、早めの回収を目指しましょう。
また、年末調整手続きで提出必要な申告書は以下のとおりです。
・扶養控除等(異動)申告書
・配偶者控除等申告書
・基礎控除申告書
・所得金額調整控除申告書
・保険料控除申告書
・住宅借入金等特別控除申告書(該当あれば)
配偶者控除等申告書、基礎控除申告書、所得金額調整控除申告書は1枚の紙でまとめられているため、実際記入する紙は4枚です。
それぞれ申告書の書き方については、国税庁の公式サイトにて詳しく解説されているので参考にするとよいでしょう。
ここからは、年末調整の金額計算方法を簡単に解説していきます。基本的な計算の流れは次のとおりです。
1.給与金額、社会保険料、等源泉徴収税額を集計
従業員に支払済みの1年間給与支給額から年間収入額を算出します。この時に、給与から控除した社会保険料と源泉徴収済み所得税の計算も集計が必要です。
2.給与所得控除の差し引き
年間収入額に応じて定められた給与所得控除額を差し引いて、給与所得額を算出しましょう。<年間収入額-給与所得控除額=給与所得額>
3.所得控除額の差し引き
従業員が提出した控除申告書を元に給与所得額から所得控除額を差し引き、課税所得を出します。<給与所得額-所得控除額=課税所得>
年末調整で引かれる所得控除は、以下のとおりです。
生命保険料控除
地震保険料控除
社会保険料控除
扶養控除
配偶者控除
配偶者特別控除
小規模企業共済等掛金控除
基礎控除 など
4.所得税率の計算式と控除額の差し引き
課税所得に所得税率を掛けます。そこから控除額を差し引き算出できるのが所得税額です。<課税所得×税率-控除額=所得税額>所得税の税率については次のリンクを参考にすると良いでしょう。No.2260 所得税の税率
5.住宅ローン控除額の差し引き
従業員が住宅ローン控除を希望する場合、所得税額から住宅ローン控除を差し引きます。住宅ローン控除を差し引いた額が、年調所得税額になるのです。<所得税額-住宅ローン控除額=年調所得税額>
6.源泉徴収税額と年調年税額を比較
年調所得税額に復興所得税額の102.1%を掛けて、年調年税額を算出します。<年調所得税額×102.1%=年調年税額>
そして最後に、1年間に源泉徴収した所得税額と年調年税額を比較し、過不足金を洗い出します。年調年税額が源泉徴収税額より多い場合は、不足分の追加徴収が必要です。反対に、年調年税額が源泉徴収額より少ない場合は、超過分を還付します。
年末調整は、所得税法で定められている雇用主の義務となっています。企業が年末調整を怠った場合には罰則が課せられる可能性があります。
従業員側に書類提出の遅れや、提出忘れなど不備があった場合に年末調整ができないこともあります。その場合は企業に罰則はありませんが、従業員には、各種控除の申告ができない、税金の過払いになる、確定申告をしなければならない、といったデメリットが生じます。
企業としては、こうしたデメリットをしっかり従業員に伝え、年末調整を正しく行えるように指導する必要があります。
2021年生まれ。 BPOや業務効率化など企業成長のためになることがすき。 特にスタートアップやベンチャーなど新しいことに挑戦している人たちを応援するのが生きがい。 知りたい情報のリクエストも受け付けてます!
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